その6 残響

10月5日 鳴沙山(ミンシャシャン)
暗いうちから 出勤を待った 3頭立て 予約の人数で頭数が決まるようだ 鼻緒で繋いである 先頭に跨った 立ち上がる時 笑いが込み上げる 二番手の鼻緒が度々切れた 聞くと「この子はズルしてます 、今日はやる気がありません」とのこと どうやら先頭に鼻を引かせていたようだ 笑ってしまった 「痛くは無いのか」と聞くと 何か言いたげな目をした・・よく見ると とぼけた顔をしている 因みに背中のコブは硬かった


急勾配の手前で降ろされた 駱駝は暫時休憩 その間 砂山を登ることにした


なんでハシゴがあるのか訝ったが 登り始めて理由が分かった 無いと登れない   滑落しそうになりながら 必死で登った やっとのことで尾根まで辿り着くと 太腿が震えた 尾根は更に上に伸びていたが  戦意喪失
ここの砂丘は条件が揃えば 〝鳴く〟そうだ 名前の由来である 条件の一つはサラサラであること 滑るわけだ 鳴いて欲しかったが 泣きそうになった


ここへ来たのはラクダに乗るため では無い 実は 知りたいことがあったのだ かつて観た映画の中で 「何故砂漠に来るのか」と聞かれた主人公が「砂漠は清潔だ」と答えるシーンがあった どういう訳か 響いた ずっと忘れる事は無かった やっと来た で どうだったか と言うと・・そんな想いに耽る状況も余裕も無かった 正直に言うと 忘れていた しかしどうでも良かったとも思えない 一体何だったのか どうせ分からないとでも思ったか それは天啓 考えたり 教えられて分かるようなものでは無いことを 薄々感じていたからに違いない 敢えて忘れていたか 呆け か それにしても  念は残った

つづく